施本 「仏教・空の理解から学ぶ」

岩瀧山 往生院六萬寺

Road of Buddhism


著者 川口 英俊

ホームページ公開日 平成20年12月15日   執筆完了日 平成20年12月8日

施本発行 平成20年12月28日



 九、仏教的生き方


 さて、前章においては、縁起と空の理解を進め、慈悲の実践へ向けて無分別・不二・平等のありようについても、その理解を及ぼしていかなければならないと述べさせて頂きました。

 次に、更には
縁起・空をも超えて、最終的には無分別・戯論寂滅へと至り、最高の智慧を完成させ、諸法実相・真如の観方を調えていくということになります。そして、自利利他・慈悲の実践が、まさに大乗仏教における要諦となります。

 その自利利他・慈悲の実践の積極的な進め方を調えた上で、次に方便を用いて、あらゆる衆生に対してあまねく及ぼしていけるかどうかが重要なこととなります。

 自利利他・慈悲の実践をあまねく及ぼしていくというのは、つまり、
ま ずは己のありようをしっかりと調えた上で、次に一番身近な者たち、家族、親族から、友人、同僚、知り合いへと、更には、地域の人々、国の人々、世界の人々 から、動物たち、植物たち、昆虫たち、微生物たち、地球のあらゆるものたちから、宇宙のあまねくものたち、更に、三世(過去・現在・未来)におけるあらゆ るものたちへも及ぼしていかなければならないということであります。

 もちろん、
愛 する者、好きな者、頼りにしている者、自分に好意を持つ者、自分を頼りにしている者、のみならずに、嫌いな者、自分を嫌っている者、憎い者、自分に憎しみ を持っている者、自分に敵意を持っている者、危害をもたらしてくる者、自分に対して誤解を持っている者、のみならず何ら関係がないと思われる者たちに対し ても縁起を理解し、無分別・不二・平等なる自利利他・慈悲の実践を、あまねくあらゆる三世の一切のものたちへと及ぼしていくのであります

 この実践の過程は、他の誰から言われるまでもなく、自分自身が何よりもまずは理解しているはずであります。
 
 「自己こそ自分の主である。他人がどうして(自分の)主であろうか。自己をよくととのえたならば、得がたき主を得る。」(ダンマパダ・一六○)

 「先ず自分を正しくととのえ、次いで他人を教えよ。そうすれば賢明な人は、煩わされて悩むことが無いであろう。」(ダンマパダ・一五八)

 「他人に教えるとおりに、自分でも行なえ-。自分をよくととのえた人こそ、他人をととのえるであろう。自己は実に制し難い。」
(ダンマパダ・一五九)
  
 「みずから悪をなすならば、みずから汚れ、みずから悪をなさないならば、みずから浄まる。浄いのも浄くないのも、各自のことがらである。人は他人を浄めることができない。」(ダンマパダ・一六五)

  七仏通誡偈(しつぶつつうかいげ)

「諸悪莫作(しょあくまくさ)
 衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)
 自浄其意(じじょうごい)
 是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」


 「すべて悪しきことをなさず、善いことを行ない、自己の心を浄めること、-これが諸の仏の教えである。」(「ブッダの真理のことば 感興のことば」中村元訳 岩波文庫

 自らには誰も嘘はつけません。どれだけ自分は菩薩の道を進めたのか、慈悲・利他の及ぼしがどのあたりまでできているのか、悪をなさずして、どれほどの善を行えているのかは、それぞれ自身においてでしか、本当に真なるところは分かりえないことであります。

 
「この世で自らを島とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法を島とし、法をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ。」(大般涅槃経 ブッダ最後の旅・中村元訳・岩波文庫)

 お釈迦様が弟子のアーナンダへ説いた遺言の大切な一つであります。いわゆる
「自燈明・法燈明」・「自帰依自灯明、法帰依法灯明」の教えであります。

 もちろん、
「自ら・自己・自分」という何か実体があるわけではなく(非有)、何も無いというわけでもなく(非無)、また、有る無いのどちらでもない(非有非無)、大いなる縁起の中において仮に存在できている自分であるということについては、十分に気をつけておかなければなりません

 
自らを常に省みて、法(仏法の真理)をよりどころとし、修行を完成させ、涅槃の境地、最高の智慧の境地へと至り、世俗諦から勝義諦へ、勝義諦から世俗諦へと自由自在に行き来できるようになって、自利利他・慈悲の実践に精進努力していかなければならないということであります。

 さて、今回の施本の内容において最も重要となるお釈迦様の言葉を最後に今一度、書き記させて頂きまして、本論の執筆を終えたいと存じます。


「縁起を見る者は、法(真理)を見る。法(真理)を見る者は、縁起を見る。」


 この浅学非才、未熟者の本論を最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。



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 章


 一、はじめに
 
 二、仏教・基本法理の理解

 三、般若思想の理解

 四、般若心経の理解

 五、中観思想の理解

 六、唯識思想の理解

 七、仏教の実践

 八、縁起・空の理解からの実践

 九、仏教的生き方

 十、最後に

 参考・参照文献一覧



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